2014 年 75 巻 2 号 p. 525-531
症例は78歳,男性.45歳時に胆嚢結石症にて開腹胆嚢摘出術を施行されている.慢性腎不全の悪化にてCTを施行したところ,肝下面(S5~S6)に接する5.2cm大の腹腔内腫瘤を指摘された.腫瘤には石灰化を伴う厚い被膜があり,肝との境界は保たれており,肝原発の腫瘍を完全には否定できなかったが腸間膜腫瘍を第一に疑い,手術を施行した.腫瘤は肝および上行結腸と一塊になっており,上行結腸の漿膜筋層を一部切除する形で腹腔鏡補助下肝部分切除を施行した.病理では腫瘍細胞は認めず,内部は変性した血腫が主体で,血腫内および被膜内部に新生血管と新鮮な赤血球を認め,chronic expanding hematomaと診断した.術後経過は良好で血液透析は施行しておらず,再発の兆候もみられない.今回,まれな腹腔内chronic expanding hematomaに対し,腹腔鏡補助下切除を施行したので報告する.