2014 年 75 巻 3 号 p. 633-637
当院で経験した,極めて稀な非機能性副甲状腺癌の1例を報告する.症例は62歳の男性で,CTにて偶然甲状腺腫瘍を指摘された.超音波検査で左葉中央背側に12mmの低エコー結節を認めたため細胞診がなされたが,その際に使用された穿刺針洗浄液のPTHが高値であったため,副甲状腺腫瘍が疑われた.カルシウム・リン・intact-PTHはいずれも正常範囲であったが,非機能性副甲状腺腺腫の診断で,甲状腺の一部を切除する形で腫瘍を摘出した.病理にて副甲状腺癌の診断であったため,追加手術として甲状腺左葉切除および気管前傍郭清を行ったが,腫瘍の遺残は認めなかった.初回手術より1年経過した時点で腫瘍の再発を認めていない.