日本臨床外科学会雑誌
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症例
乳癌との鑑別に苦慮した類上皮血管内皮腫の1例
岸本 拓磨林 英司岡田 禎人前田 隆雄石田 陽祐
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2014 年 75 巻 3 号 p. 638-642

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抄録

今回われわれは,術前診断で乳癌との鑑別に苦慮した類上皮血管内皮腫の1例を経験したので報告する.症例は50歳,女性.右乳腺腫瘤を主訴に当科を受診した.触診では右D領域に小豆大の腫瘤を触知した.マンモグラフィではFADが指摘され,乳腺超音波検査では右D領域に0.4×0.4cmの境界明瞭な楕円形の低エコー腫瘤(カテゴリー3b)を認めた.乳腺針生検の病理組織学的所見では,不規則な紡錘細胞の錯綜増生があり変性や壊死巣などを認め悪性腫瘍が疑われた.術前診断では紡錘細胞癌を疑い,乳房扇状切除とセンチネルリンパ節生検を行った.術後経過は良好で第7病日に退院となった.切除標本の病理組織学的評価では,乳腺近傍の軟部組織から発生した類上皮血管内皮腫と診断した.類上皮血管内皮腫は全身のいずれの部位からも発生し得るが,肺・肝などに多いとされており,乳房に発生することは稀である.若干の文献的考察を加えて報告する.

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