日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
腹水貯留で発症した腹膜播種を伴う尿膜管癌の1例
岩田 至紀國枝 克行河合 雅彦長尾 成敏田中 千弘種田 靖久岩田 仁
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 75 巻 3 号 p. 817-820

詳細
抄録

症例は67歳,男性.2012年8月より腹部膨満感を自覚し,背部痛も出現したため近医を受診した.腹部超音波検査で多量の腹水を認め,当院消化器内科を紹介された.CTで下腹部正中腹壁直下に石灰化を伴う6cm大の乏血性腫瘤を認め,尾側では膀胱浸潤が疑われた.また,腹水を多量に認め,大網に結節像を認めた.FDG-PETでは,大網に集積を認めたが,腫瘤への集積は軽度であった.膀胱鏡では,腫瘍による圧排所見のみであった.腹膜播種を伴う尿膜管癌が疑われ,切除生検目的に当科紹介となった.腹腔内には黄色漿液性の腹水が3,500ml貯留し,大網や小腸間膜に多量の腹膜播種結節を認めた.腫瘍は膀胱に浸潤性に連続しており,大網と膀胱の一部を合併切除した.術後経過は良好で術後8日目に退院した.病理組織検査では粘液腺癌であり,尿膜管癌と診断した.現在,全身化学療法としてmFOLFOX6+bevacizmabを継続中である.

著者関連情報
© 2014 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top