抄録
症例は68歳,男性.慢性C型肝硬変・肝細胞癌に対して,2009年に米国で脳死肝移植を施行し,その後,本邦で免疫抑制剤を投与されていた.2011年にスクリーニングの腹部CTで胃壁肥厚を指摘され,上部内視鏡検査を施行したところ,胃角部小弯に2型進行胃癌を認めた.術前画像診断から移植肝血管は総肝動脈レベルでの吻合と考え,グラフト血管損傷に留意しながら幽門側胃切除(D1+)を施行した.術中に肝外側域に強固な癒着を認め,肝への直接浸潤と考え肝部分切除を行った.病理組織学的診断はpT3(SS),N1,Stage IIIA,肝浸潤は認めなかった.術後補助化学療法は副作用が強く中止となったが,胃癌術後2年経過した現在,無再発生存中である.移植後の免疫抑制剤の使用が悪性腫瘍の発生に関与していると考えられており,移植後の長期生存例の増加に伴い移植後悪性腫瘍の症例は増加していくと予想される.