2014 年 75 巻 4 号 p. 973-977
症例は63歳,男性.上咽頭癌右鎖骨上リンパ節再発に対し,セツキシマブ+放射線療法を2コース施行した.効果判定にて施行したCT検査にてフリーエアと小腸の気腫性変化を認めた.しかし,腹水は認めず腸管血流が保たれていたこと,腹痛および腹膜刺激症状も認めなかったため,経過観察とした.消化管穿孔を否定するために上下部消化管内視鏡検査を行ったが異常所見は認めなかった.第7病日のCT検査ではフリーエアおよび腸管気腫像の消失を認めた.その後,セツキシマブの投与を中止し放射線療法を再開したが,腸管気腫の再燃は認めなかった.近年,ヒト上皮成長因子受容体抗体であるセツキシマブによる腸管気腫症が少数例報告されている.自験例はセツキシマブ投与により腸管粘膜の脆弱化および透過性の亢進が生じ,便秘症による腸管内圧の亢進により腸管気腫を発症,その破裂によりフリーエアを生じたと考える.