抄録
66歳,男性.心窩部不快感精査にて胃大彎前壁から前庭部にかけて4型胃癌を認めた.2005年9月に胃癌に対して幽門側胃切除術(D2郭清R-Y再建)を施行した.術後診断はpT3N2M0CY0P0 stage IIIB(UICC第6版).胃癌術後16日目に右鼠径ヘルニアに対し,ヘルニア根治術Kugel法を施行した.胃癌術後32カ月目に右鼠径部の腫瘤と陰嚢水腫を自覚.40カ月目に胃癌転移と診断された.転移巣に対し放射線療法の後,化学療法を3rdラインまで施行したが,胃癌術後68カ月目に死亡した.病理解剖では,全身にリンパ行性転移を認める一方,肝転移・肺転移を含む血行性転移,腹膜播種を認めなかった.転移形式から,血行性転移の可能性は低く,リンパ行性転移が主であったと考えられた.胃癌の鼠径部転移は非常にまれであり,鼠径部の手術,もしくはメッシュの挿入が転移の原因となった可能性も否定できない.