2013 年 69 巻 7 号 p. III_473-III_479
海草は沿岸域の生物多様性に対し重要な役割を担っていることが知られている. 一方で, これらの海草が受ける温暖化の影響が懸念されている. 海草コアマモ(Zostera japonica)は, 他海草よりも浅い環境を好み, 潮間帯や潮下帯上部に生息することから, 海面上昇や水温変動などの温暖化の影響を直接的に受けると推測されるが, 温暖化に対する既往の知見が少ない. そこで, 異なる水温下や光量子量における海草コアマモの光合成速度と呼吸速度の測定結果から, コアマモ光合成モデルを作成した. さらに, 同様にアマモ(Zostera marina)のモデルも作成し, これらにIPCCのA1Bシナリオを組み込むことで温暖化がこれらの海草に与える影響を検討した. その結果, コアマモの生育下限では季節的に光合成量の減少が見られるが, 生育上限では増加することが示された.