2014 年 75 巻 5 号 p. 1292-1295
症例は85歳,女性.平成24年6月,大腿ヘルニア嵌頓に対し,腹腔鏡補助下に嵌頓小腸を観察しつつ,大腿法でmesh plugを用い修復した.嵌頓小腸は整復時暗赤色調であったが,色調は改善傾向にあり腸管切除は行わなかった.合併症なく第11病日に退院したが,術後32病日に腹痛と嘔吐で当院救急外来に受診,イレウスと診断し入院した.絶食にて一旦イレウス症状は改善したが,経口摂取開始後再度イレウスとなった.イレウス管を挿入し造影すると回腸で完全閉塞していた.術後の癒着,または嵌頓部の遅発性狭窄を疑い鏡視下に手術を施行した.前回手術時に嵌頓していたと考えられる小腸が肥厚し狭窄していた.肥厚した小腸を体外で切除し端々吻合した.摘出標本では小腸に2cmの全周性肥厚を認めた.病理検査では粘膜の脱落,線維性肥厚を認めた.整復後は虚血性小腸狭窄を念頭に置き,少なくとも数カ月間は経過観察が必要と考えられた.