2014 年 75 巻 5 号 p. 1308-1315
空腸穿孔をきたしたII型腸管症関連T細胞リンパ腫の2例を経験した.症例1は71歳,男性.腹痛を主訴に当院救急部を受診した.当科転科後の諸検査の結果,上部消化管穿孔の診断で緊急手術を施行した.空腸に穿孔を認め,同部を含め10cm程度切除した.症例2は84歳,男性.下腹部痛のため,近医受診後急性腹症の疑いで当科に紹介された.諸検査の結果,上部消化管穿孔の診断で緊急手術を施行した.空腸に穿孔を認め,同部を含め切除した.病理組織所見は2症例ともに病変部では粘膜上皮は脱落し,粘膜固有層から漿膜下層に中型のリンパ腫細胞がびまん性に増生していた.免疫染色では腫瘍細胞はCD3・CD8・CD56・TIA-1・granzyme Bが陽性であり,II型腸管症関連T細胞リンパ腫と診断された.Ki-67LIは90%以上と高率であった.なお,症例1ではCD20が腫瘍細胞に弱陽性であった.若干の文献的考察を加えて報告する.