日本臨床外科学会雑誌
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症例
多発肝膿瘍を伴い転移性腫瘍と鑑別が困難であった十二指腸乳頭部癌の1例
谷 博樹渕野 泰秀富安 孝成岩永 真一城崎 洋
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2014 年 75 巻 5 号 p. 1392-1401

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抄録

症例は69歳,女性.主訴は心窩部痛と発熱で,肝機能障害と炎症反応がみられ,内視鏡で乳頭部腫瘍による急性胆道炎と診断した.造影CTを行うと肝内に造影早期相で辺縁がリング状増強を示す低吸収性腫瘤が多発性に認められた.これら肝腫瘤は,USでは辺縁低エコー帯を伴う低エコー性腫瘤として,造影MRIは早期相で辺縁がリング状増強を示し,肝細胞相で低信号となり,転移性腫瘍の可能性が高いと考えた.FDG-PETは肝腫瘤に集積がなく,経過観察して肝腫瘤が消失したため,肝膿瘍と判断した.開腹所見も肝転移はなく治癒切除に至り,術後2年を経過し再発徴候はない.乳頭部癌は他の胆道癌よりも肝膿瘍を伴う頻度が高く,転移性腫瘍との鑑別診断において特に注意を要する.FDG-PETは転移と膿瘍の鑑別に有用であった.診断が困難な場合は,慎重な経過観察を行い短期間で再検することが重要と考えた.

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© 2014 日本臨床外科学会
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