2014 年 75 巻 7 号 p. 1772-1776
近年,遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)に対する認識が高まり,濃厚な乳癌・卵巣癌の家族歴や若年発症のトリプルネガティブ乳癌等を契機にBRCA遺伝子検査を受ける患者が増えつつある.当院では,乳癌術前にHBOCと診断された場合NCCNガイドラインに基づき乳房切除術を勧めている.2014年1月現在,当院でBRCA1/2遺伝子変異陽性と診断された患者は紹介患者を含め28人である.28人中10人は初発乳癌の診断後,術前にBRCA検査を受け,8人が乳房切除術を受けた.一方,残りの18人は術後の検査希望あるいは,温存乳房内再発などを契機にBRCA遺伝子検査を受けHBOCと診断された.乳房温存術を受けた17人中7人に温存乳房内再発が認められた.今回当院で経験したHBOCの温存乳房内再発症例を呈示し,遺伝性乳癌に対する今後の至適手術マネージメントについて考察する.