2014 年 75 巻 8 号 p. 2136-2139
症例は46歳の女性.1年前に左乳房のしこりを自覚し,1カ月前に出血をきたすようになり当院を受診した.左乳頭を中心にびらん,出血を伴う10cm大の黒色の腫瘤を認めた.針生検の結果,真皮内にメラニン顆粒を豊富に有する腫瘍細胞がシート状に増生しており,悪性黒色腫と診断した.CTにて脳転移を認め既に片麻痺を伴っていたため,定位放射線照射の後に,乳房切除術+腋窩リンパ節郭清術・術後化学療法を行ったが,胸壁再発・脳転移のため術後14カ月後に原病死した.乳房,特に乳頭部に発生する悪性黒色腫は,pigmented mammary Paget's diseaseとの鑑別を要する.今回稀な乳頭部に発生した悪性黒色腫を経験したため報告する.