2014 年 75 巻 8 号 p. 2317-2321
症例は60歳男性で,左下腹部痛を主訴に前医を受診した.左下腹部に20cm大の腫瘤を触知し,血液検査では炎症反応が上昇していた.造影CTでは,左腹部に14cm大の腹腔内腫瘤を認め,その右側に接して12cm大の後腹膜腫瘤を認めた.抗菌薬投与により炎症が改善した後,手術を施行した.術中所見では,左腹部の腫瘍は脂肪腫と思われる後腹膜腫瘍と茎で連続しており,茎が捻転していた.茎を切離して左腹部の腫瘍を摘出した後,残りの後腹膜腫瘍を可及的に切除した.左腹部の腫瘍は920gで出血壊死を伴っており,病理組織学的診断は,いずれの腫瘍も後腹膜脂肪腫だった.
後腹膜脂肪腫は比較的まれであり,中でも有茎性に発生するものの報告はわずかである.今回,茎捻転をきたした有茎性後腹膜脂肪腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.