抄録
80歳台,男性.腹痛・嘔吐を主訴に当院に紹介され,腸閉塞と診断しロングチューブによる保存的治療を行った.症状は改善したが,Treitz靱帯より100cmの部位からロングチューブは進まなかった.造影検査で同部腸管の圧排像とCTにて先進部近傍に内部不均一な脂肪構造と周囲血管の捻転所見を認め,小腸軸捻を疑い手術を行った.腹腔鏡下に検索すると,左腎下極後腹膜に6cm大の腫瘍を認め,腫瘍と腸間膜の間に形成された索状物により小腸が内ヘルニアを起こしていた.索状物を切離し,内ヘルニア整復後,腫瘍直上の腹壁に8cmの小開腹創をおき,腫瘍を摘出した.組織学的検査は出血を伴った脂肪腫であった.後腹膜脂肪腫による腸閉塞はまれであるが,腸閉塞部に脂肪構造を認めた場合,後腹膜脂肪腫の可能性も考慮し,精査および治療にあたる必要があると思われる.その際,腹腔鏡下検索は正確な病態把握と適切な術式選択に有用であると考えられた.