抄録
バルーン付き経鼻経腸栄養チューブに起因した多発小腸潰瘍からの出血に対し3度の開腹を要した症例を経験した.症例は49歳の女性,頸椎手術後に両側反回神経麻痺を認め,10Fr経鼻経腸栄養チューブを挿入,注射用水15mlでバルーン固定し空腸へ留置した.10日後に出血性ショックを呈す下血があり,造影CTにて広範囲の小腸の集簇と小腸内に造影剤の漏出を認めた.筋性防御を認め腹膜炎と診断し緊急開腹したところ,潰瘍による小腸穿孔を認め,潰瘍部分を切除して縫合閉鎖した.同日深夜より再下血を認め血管撮影下でコイルにて塞栓・止血し,塞栓範囲の小腸を部分切除した.しかし3度目の下血を認めたため,超選択的に狭範囲で塞栓・止血し経過観察としたが,5日後に虚血壊死に陥り小腸部分切除を施行した.手術所見および切除検体からバルーンによりチューブが著しく先進し,小腸が集簇したことにより循環障害が発生し潰瘍形成されたと推察された.