日本臨床外科学会雑誌
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症例
腹腔内遊離ガスを伴う腸管嚢腫様気腫症を契機に診断された強皮症の1例
崔 玉仙大坪 義尚今中 信弘木村 真二郎
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2014 年 75 巻 9 号 p. 2482-2488

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抄録

症例は60歳,女性.既往に虫垂炎手術,橋本病,2回の腸閉塞入院がある.腹痛・腹部膨満を主訴に当院内科受診,胸腹部単純X線写真・CTにて腹腔内遊離ガスを認めたため,消化管穿孔の疑いで外科へ紹介となった.しかし,腹膜刺激所見はなく全身状態は良好,採血にて炎症反応を認めなかった.CTにて腸管嚢腫様気腫症所見を認めたため,これに伴うフリーエアーと推測し,保存的治療を行ったところ症状は速やかに改善した.その後,精査にて偽性腸閉塞症の診断となり,さらに数カ月後,全身浮腫を主訴に中核病院総合内科を受診したところ強皮症の診断となった.強皮症に伴う腸管気腫症の報告は本邦で27例(会議録除く)ある.腸管気腫症は腹腔内遊離ガスを伴うことがあり,開腹の判断を問われる場合があるが,多くは穿孔や機械的閉塞機転を伴わないため,強皮症の有無などの既往歴のほかに臨床所見を考慮して慎重に決定する必要がある.

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© 2014 日本臨床外科学会
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