2014 年 75 巻 9 号 p. 2531-2536
症例は78歳,男性.黄疸を主訴に当院受診した.腹部CTとERCPにて左肝管起始部から総肝管にかけて約3cmの陰影欠損・腫瘤像を認め,肝門部胆管癌と診断し,肝左葉+尾状葉切除,肝外胆管切除・再建術を行った.切除標本では左肝内胆管起始部から総肝管にかけて32×7mmの境界明瞭で柔らかい腫瘍病変を認め,病理組織結果は中分化型肝細胞癌であった.腫瘍は胆管壁と2箇所において交通し,その周辺肝実質内に術前同定できなかった大きさ5mmの被膜を有する小肝細胞癌を2個認めた.しかし,胆管腫瘍と小肝細胞癌との間に連続性は確認できず,原発病巣が不明な胆管腫瘍栓を伴った肝細胞癌と診断した.胆管腫瘍栓に特徴的な画像所見を認め,胆管癌が疑わしい場合,胆管腫瘍栓に対する術前の積極的な診断は,より低侵襲な術式を選択できる可能性があり,有用であると考えられた.