2015 年 76 巻 1 号 p. 58-62
症例は30歳,男性.下腹部痛を主訴に来院した.Multi Detector-row Computed Tomography(以下MDCT)所見より病変は上腸間膜動脈により栄養され,回腸の腸間膜付着部に位置することから重複腸管を疑い,同日腹腔鏡下回腸部分切除術を施行した.回腸末端から約80cm口側の回腸に付着する嚢胞性病変を認め,体外にて病変を含めた12cmの回腸を部分切除した.病変部は回腸壁の腸管膜側に付着した6×4cm大の球形の嚢胞性病変であり,消化管内腔との交通は認めなかった.組織学的所見では小腸粘膜と粘膜下層,固有筋層よりなる嚢胞壁を有し,筋層の一部を腸管と共有していたことから回腸重複腸管と診断した.成人発症の重複腸管は比較的稀であり,臨床像も生じる部位によって様々であることから術前診断は容易ではない.本邦における成人発症の小腸重複腸管の臨床的特徴を検討する.