日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
会議情報

イネの再分化能QTL遺伝子の単離と選抜マーカーとしての利用
*西村 明日香芦苅 基行林 少揚高師 知紀Enrique R. Angeles山本 敏央松岡 信
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 677

詳細
抄録
 再分化能は植物の組織培養を左右する重要な要因であり形質転換法を利用する上での制限要因となっている。一般にイネや麦類、トウモロコシなどの主要作物は再分化能が低く組織培養が困難であることから、その培養系の確立のためには培地組成や供試組織などに関する多大な試行錯誤が必要とされる。イネでは再分化能の品種間差が非常に大きく、日本晴やカサラスなどのモデル品種が高い再分化能を示すのに対して農業上の主要品種であるコシヒカリやIR64は再分化能が低いことが問題とされている。
 再分化能は量的遺伝子座(QTL)によって遺伝的に制御されている形質である。著者らはイネの再分化能の品種間差解消と再分化過程の遺伝子機構の解明を目的にコシヒカリとカサラスの再分化能の差異を支配するQTL遺伝子、PSR1遺伝子の解析を進めその単離に成功した。PSR1遺伝子を改変することにより、コシヒカリに再分化能を付与することができ、さらにPSR1遺伝子が形質転換植物の選抜マーカーとして利用できることを確認した。この選抜方法はイネ本来が持つPSR1遺伝子を用い、抗生物質や除草剤などの薬剤が不要であるため従来法よりも環境や健康への影響が少なく、作製コストの低い組換え作物の開発へつながることが期待される。本発表ではPSR1遺伝子の機能解析およびPSR1遺伝子を用いた選抜法について報告する。
著者関連情報
© 2005 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top