日本臨床外科学会雑誌
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症例
腹痛部位が移動した腸間膜脂肪織炎の1例
田嶋 健秀武藤 満完松村 直樹西條 文人片寄 友徳村 弘実
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2015 年 76 巻 10 号 p. 2456-2460

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抄録

症例は30歳台,女性.右下腹部痛を主訴に急性虫垂炎疑いで紹介受診.CTで回腸末端の著明な壁肥厚と腸間膜の脂肪織濃度の上昇があり,回腸末端炎と診断し抗生剤治療を開始した.しかし,画像上腸管の壁肥厚は改善していたものの,腸間膜の炎症所見は増悪していた.経過から腸間膜脂肪識炎と診断した.腹痛の部位は徐々に右下腹部から左上腹部へと移動し,CTでも腸間膜の炎症は左上腹部の小腸腸間膜へ移動していた.抗生剤と絶食での保存的治療では改善が得られなかったため,ステロイドを投与した.投与翌日に腹痛は著明に改善し,徐々にステロイドを減量して軽快退院となった.今回われわれが経験した症例は腹痛の部位が移動し非常に稀な臨床症状を呈した.診断に難渋したものの,保存的に治療しえた腸間膜脂肪織炎の1例を経験したため文献的考察を加えて報告する.

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© 2015 日本臨床外科学会
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