日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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ISSN-L : 1345-2843
76 巻 , 10 号
選択された号の論文の46件中1~46を表示しています
臨床経験
  • 松本 元, 山神 和彦, 出合 輝行, 橋本 隆, 門澤 秀一, 市川 一仁
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2367-2372
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    センチネルリンパ節(SLN)微小転移例は,郭清省略の方向に進んでいるが,全例には術後放射線治療が付加されないため,症例ごとに非SLN転移陰性を追求することが重要.ICG蛍光法は解剖学的リンパ流に沿い,より多くのSLNを同定でき,OSNA法は同定されたSLN全体を精査できる.両者を組み合わせ,SLN微小転移例で非SLN転移偽陰性率を低減できるかを検討した.28例のSLN微小転移例のうち,ICG蛍光法での非SLN転移の残存率は14.3%(4/28),2個以上のSLN精査は85.7%(24/28)で可能で,非SLN転移の残存率は8.3%(2/24)であった.色素法では2個以上のSLN精査時は同率の8.3%(1/12)であるが,2個以上同定できる割合は42.9%に過ぎない(12/28).以上より,高率に2個以上のSLNを同定できるICG蛍光法とOSNA法により非SLN転移偽陰性率を低減できると考えた.
症例
  • 田中 綾, 雨宮 剛, 平松 聖史, 後藤 秀成, 関 崇, 酒井 優, 新井 利幸
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2373-2377
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    症例は30歳,女性.2010年6月,左乳房に2.5cm大の腫瘤を自覚し近医を受診.吸引式乳房組織生検(VAB)で管周囲型線維腺腫と診断し経過観察した.1カ月後に妊娠し,腫瘍の増大を認めたが妊娠によるものと判断し経過観察した.妊娠8カ月に15cm大に増大したため,再度VABを施行.良性の増殖性病変と診断したが,急速増大していることから葉状腫瘍も否定できず,手術目的に当院紹介となった.左乳房外側上方を中心に15cmの腫瘍を認め,乳腺エコーで境界明瞭平滑,内部不均一な腫瘤,MRIでは境界明瞭で乳腺組織を内尾側に圧排する分葉状腫瘤を認め,T2強調像で腫瘤の内部が不均一で変性が強いことより葉状腫瘍を疑った.妊娠週齢を考慮し,32週に全身麻酔下に腫瘍摘出術を施行した.病理組織学的検査では管周囲型線維腺腫であった.今回われわれは,妊娠期に急速増大した繊維腺腫の1例を経験したので若干の文献的考察を含め報告する.
  • 下平 健太郎, 塩澤 幹雄, 小林 茂, 穂積 康夫, 安田 是和
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2378-2381
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,男性.圧痛を伴う左乳房腫瘤と皮膚の発赤を認めたため近医を受診し,炎症性乳癌を疑われ当院紹介となった.超音波検査では,左乳頭直下に比較的境界明瞭で内部やや不均一の低エコー腫瘤を認め,乳癌を考慮した.MRIでは,左乳頭直下にring enhancementを示す腫瘤を認めたが,その近傍に膿瘍形成時に特徴的な瘻孔を認め,乳輪下膿瘍に合致する所見であった.針生検を施行し乳輪下膿瘍の診断が得られた.抗生剤内服の保存的治療で軽快し,現在も再発は認めていない.男性乳輪下膿瘍は極めて稀な疾患であり,乳癌との鑑別が重要である.男性乳輪下膿瘍の本邦での報告例は3例のみであり,画像評価は定まっていない.そのため,細胞診や針生検など組織学的な評価が必要となることが多い.今回,男性乳輪下膿瘍の1例を経験し,乳癌との鑑別にMRIが有用であると考えられた.
  • 山本 芳樹, 蔭山 典男, 田中 良一, 内山 清
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2382-2386
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,女性.21年前に左腎細胞癌にて左腎全摘術施行され,その後は再発を認めなかった.平成24年10月に左乳房に腫瘤を自覚し当院受診された.左乳房CD領域に直径約3.5cmの腫瘤認め,core needle biopsy (CNB)を行った.CNBと前医での腎原発巣との組織像を比較したところ類似していたため,腎細胞癌からの左乳房転移と診断した.PET検査にて左乳房以外に異常集積認めず,腎細胞癌の孤立性乳腺転移と診断し,左乳房円状部分切除を行った.術後無治療で2年経過しているが,無再発生存中である.腎細胞癌の場合,術後長期間経過していても十分転移・再発の可能性を考慮することが重要である.
  • 渕上 ひろみ, 竹田 奈保子, 水野 嘉朗, 佐藤 一彦
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2387-2391
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    症例は53歳の女性で,術後再発乳癌に対し外来化学療法施行中,頸部皮膚転移による内頸静脈の閉塞をきたした.上大静脈の末梢側に位置する内頸静脈が,皮膚転移の悪化により閉塞し,上大静脈症候群と類似した顔面・口腔などの著明な腫脹が出現した.放射線照射による喉頭浮腫の既往があり,外来にて化学療法を継続していたが治療効果を認めなくなったため,症状の緩和を企図しステント留置を選択した.本症例では血管内ステント留置による症状改善が得られたため,文献的考察を加えて報告する.
  • 濵田 博隆, 原口 尚士, 上木原 貴仁, 崎田 浩徳, 今村 博, 夏越 祥次
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2392-2398
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    症例は93歳,女性.胃癌にて幽門側胃切除術(Billroth I法再建術)を施行した.術後2日目に呼吸苦の訴えがあり,心不全を疑いドパミン・フロセミドの投与を開始した.術後3日目の心エコー検査で心尖部壁運動の低下と,採血でトロポニンT陽性がみられ急性心筋梗塞あるいはたこつぼ型心筋症を疑った.心臓カテーテル検査にて冠動脈に狭窄所見がみられなかったため,たこつぼ型心筋症と診断し直ちにドパミンの投与を中止した.呼吸不全状態が出現したため非侵襲的陽圧換気(non-invasive positive-pressure ventilation:NPPV)による呼吸管理を開始し,術後7日目に離脱した.心エコーにおける心尖部壁運動の異常は治療開始から約2週間で改善がみられた.今後,高齢者の手術症例が増加するなかで,たこつぼ型心筋症の診断から加療について周知しておくことは外科医にとっても重要であると思われる.
  • 里吉 哲太, 杉尾 芳紀
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2399-2403
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    症例は82歳の痩せ型男性.嘔吐を主訴に来院した.4カ月前から食欲が低下し,体重が減少した.腹部CTで,腎門部レベルに短径42mm大の腹部大動脈瘤と十二指腸水平脚から口側腸管の拡張が明らかになった.十二指腸水平脚周囲の脂肪の減少と腹部大動脈瘤の隆起により,大動脈と上腸間膜動脈の角度が狭小化し,腸閉塞が起きていた.われわれは全身状態の評価をしたのち,十二指腸腔腸バイパス術を行った.患者は術後に経口摂取ができるようになり,体重も増加し2カ月後に退院した.
    腹部大動脈瘤が上腸間膜動脈症候群を起こすことは少数報告されている.今回,体重減少との関連を示唆する症例を経験した.若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 福田 泰也, 大宮 英泰, 藤村 龍太, 倭 成史, 児玉 良典, 高見 康二
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2404-2411
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    80歳,男性.気腫合併肺線維症(CPFE)に併発した左上葉肺癌に対して左肺上葉切除術を施行した.非癌部位の肺は,通常型間質性肺炎像を示していた.術後11日目にPaO2/FiO2(P/F)比が67まで低下し,胸部CTにて右葉中心にすりガラス陰影が出現した.間質性肺炎の急性増悪による呼吸不全と判断し,ステロイド大量療法を開始したが,改善なく,術後13日目にポリミキシンB固定化繊維カラムを用いた直接血液灌流法(PMX-DHP)とリコンビナント・トロンボモジュリン製剤(rTM)の使用を開始した.一時は人工呼吸管理を要したが,48時間のPMX-DHP終了時にはP/F比は135まで改善した.2度目のステロイド大量療法を経て,術後20日目にはP/F比は238まで回復し,その後再増悪を認めていない.集学的治療により呼吸状態が改善したCPFE合併肺癌術後の間質性肺炎急性増悪の1例を経験したので報告する.
  • 安藤 耕平, 坂本 和裕, 野間 大督, 天野 新也, 益田 宗孝
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2412-2416
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    症例は78歳,女性.左膿胸と診断され,胸腔ドレナージと抗菌薬投与を約1カ月行ったが,膿胸腔と炎症所見とが残存したため当院へ転院.無瘻性膿胸と診断し手術予定としたが,手術待機中に線維素溶解療法を行ったところ,多量の喀痰が出現,この吸引により呼吸不全となった.治療により改善したが,線維素溶解療法による有瘻性膿胸の瘻孔の開通と考えた.手術は胸腔鏡下で行い,膿胸内容物を除去したところ肺に径約1cmの瘻孔が認められた.同部に抗菌薬を浸したゼラチンスポンジを充填した.術後空気漏れを認めず,術後11日で胸腔ドレーンを抜去,以後も良好に経過した.近年は,有瘻性膿胸に対する治療として,瘻孔の責任気管支に気管支鏡下で充填剤を詰めて無瘻化することで治癒を得られる報告が多く見られており,まず考慮すべき治療法と考えるが,本症例のように術前に瘻孔部位が同定できない有瘻性膿胸に対して,今回の治療法は適用し得ると考える.
  • 坪井 光弘, 鳥羽 博明, 川上 行奎, 先山 正二, 近藤 和也, 丹黒 章
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2417-2421
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    気管支動脈蔓状血管腫は,気管支動脈が蔓状に屈曲,拡張,蛇行,増生し,喀血の原因となる稀な疾患である.治療として肺葉切除・気管支動脈結紮などがあるが,近年では低侵襲な気管支動脈塞栓が選択されることが多い.今回,気管支蔓状血管腫による喀血に対して気管支動脈塞栓を行うも再発を繰り返したため,胸腔鏡下気管支動脈結紮を施行した症例を報告する.患者は67歳,女性.喀血の加療目的で当科に紹介された.気管支動脈造影検査にて右気管支動脈の拡張,蛇行および肺動脈との短絡路を認め,気管支動脈蔓状血管腫と診断し,気管支動脈塞栓術を行った.その後も再発を繰り返したため,胸腔鏡下気管支動脈結紮を施行した.術後は再発を認めていない.本疾患に対する気管支動脈塞栓術は低侵襲で有効な治療法として知られているが,再開通による喀血を繰り返すような症例に対しては手術を考慮する必要がある.
  • 古木 裕康, 松谷 毅, 萩原 信敏, 野村 務, 内田 英二
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2422-2426
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    左上大静脈遺残に右上大静脈欠損を合併した食道癌に切除術を行った報告例は非常に少ない.症例は72歳,男性.食欲不振を主訴に近医を受診し,食道扁平上皮癌を指摘され当科紹介となった.既往歴は,連合弁膜症(大動脈弁閉鎖不全症,僧帽弁閉鎖不全症)であった.3D-CT検査で左上大静脈遺残,右上大静脈欠損が判明した.腹臥位胸腔鏡下食道切除,腹腔鏡補助下胃管作製,後縦隔経路で食道再建術を施行した.胸腔鏡所見で,右上大静脈欠損,無名静脈,通常より極めて細い奇静脈弓を認めた.術中の循環動態は安定していた.術後合併症はなかった.食道癌手術を安全に施行するために,術前に大血管異常を診断することは重要であると思われた.
  • 宮田 一志, 白井 量久, 西垣 英治, 山田 美保子
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2427-2432
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    症例は82歳,女性.2005年6月,75歳時に胸部中部食道癌1型 扁平上皮癌 cT2 N1 M0 Stage IIBの診断にて根治的化学放射線療法を行った.2コース終了後に腫瘍,リンパ節は消失し完全奏効の診断.その後は経過観察していた.
    2012年7月のCTにて右頸部に25×38mmの腫大リンパ節を認め,食道癌根治的化学放射線療法7年後の頸部リンパ節再発と診断.他病変は認めず,同年8月,右頸部転移リンパ節切除術を行った.リンパ節は静脈角に浸潤しており,右腕頭・内頸・鎖骨下静脈を一部合併切除することで切除しえた.病理結果は扁平上皮癌であった.
    手術より6カ月後の2013年2月に,再度,頸部リンパ節再発を認め,60GyのRTを行い転移は消失した.
    さらに7カ月後,右腋窩リンパ節転移を認め,60GyのRTを行ったところリンパ節は消失し,その後は現在まで1年2カ月の間,再発は認めていない.
  • 小野澤 寿志, 持木 彫人, 福地 稔, 熊谷 洋一, 石橋 敬一郎, 石田 秀行
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2433-2437
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,男性.胃癌U,Post,cType2,cT2,N0,H0,P0,M0,cStage IBの診断にて,腹腔鏡下胃全摘術,D2(-10)郭清術,Roux-en-Y再建術を施行.術後,第3病日より39度台の発熱を認め,第7病日に施行した上部消化管造影検査で,吻合部から腹腔内への造影剤流出を認め,縫合不全の診断となった.第8病日,透視下内視鏡下に経鼻胃管による経鼻経食道的腹腔ドレナージを開始.第22病日(ドレナージ開始後12日目)に膿瘍腔の消失を認めたため,胃管抜去しドレナージ終了した.その後は症状再燃なく,第38病日に退院した.胃癌術後の縫合不全により生じる腹腔内膿瘍に対し,経腹的アプローチが困難な症例でも,本治療法は低侵襲的に治癒可能であり,有用と考えられる.
  • 下田 陽太, 関川 浩司, 山崎 将人, 太田 竜, 成田 和広, 小根山 正貴
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2438-2444
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,男性.上腹部痛を主訴に近医を受診し,胃癌を認めたため当科紹介受診となった.腹部CT検査所見上,上腸間膜動脈が十二指腸水平部の背側を走行し,多脾症と膵低形成を認めた.CT colonography所見上,大腸は腹腔内の右側に位置し,上行結腸と下行結腸の位置が逆転していた.血管構築では下腸間膜動脈と胃十二指腸動脈が欠損し,総肝動脈が上腸間膜動脈より分岐していた.以上の所見より,腸管逆回転症に発症した胃癌の診断で胃全摘,D2郭清,Roux-Y再建を施行した.患者は術後18日目に退院した.画像検査の発達した現在では,従来の造影検査以外にも有用な検査が多いため,術前より詳細な検討が可能であった.本症例においては消化管造影やCT検査以外に,CT colonographyが腸管逆回転症の診断に有用であり,またCT angiographyが血管の走行を把握する上で有用であった.
  • 古橋 暁, 深川 剛生, 前田 将宏, 森田 信司, 片井 均
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2445-2451
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    患者は69歳の男性,2007年2月に非B非C型肝細胞癌(AFP陽性)に対して拡大肝左葉切除を受けた.術後肝内再発に対し,経肝動脈塞栓術およびラジオ波焼灼術が,肺転移再発に対し放射線療法および化学療法が行われた.術後3年後,AFPの再上昇を契機に,CTで胃体上部前壁に孤立性の内腔突出型病変を指摘された.胃内視鏡検査では発赤調,易出血性の亜有茎性腫瘍で,転移性腫瘍が疑われた.急速な増大傾向もあり,出血制御目的に胃局所切除術が施行された.病理組織所見では既往の肝細胞癌と類似し,免疫染色でGP3/HEP-PAR1陽性を認め,肝細胞癌胃転移と診断した.また,腫瘍と連続した著明な静脈腫瘍栓から,転移形式は血行性転移と考えられた.胃切除術後,肺転移再発に対し局所療法を継続し,術後5年にわたり長期生存中である.肝細胞癌胃転移は2-3%と低頻度で,その予後は不良である.自験例に若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 齋藤 博紀, 近江 亮, 猪俣 斉
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2452-2455
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    症例は15歳,男性.自転車走行中に転倒し,ハンドルグリップで上腹部を強打した.翌日,腹痛が増強し当院内科を受診.急性腹症の診断で当科紹介となった.腹部造影CTで十二指腸水平脚から後腹膜にかけて気腫像,周囲液体貯留を認めた.外傷性十二指腸損傷の診断で緊急手術を施行した.Treitz靱帯より3cm口側の十二指腸水平脚後壁尾側寄りに20×10mmの穿孔部位を認め,穿孔部を単純縫合閉鎖した.経過良好で術後20日目に退院した.
    早期診断,手術により救命できた腹部打撲による外傷性十二指腸穿孔の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
  • 田嶋 健秀, 武藤 満完, 松村 直樹, 西條 文人, 片寄 友, 徳村 弘実
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2456-2460
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    症例は30歳台,女性.右下腹部痛を主訴に急性虫垂炎疑いで紹介受診.CTで回腸末端の著明な壁肥厚と腸間膜の脂肪織濃度の上昇があり,回腸末端炎と診断し抗生剤治療を開始した.しかし,画像上腸管の壁肥厚は改善していたものの,腸間膜の炎症所見は増悪していた.経過から腸間膜脂肪識炎と診断した.腹痛の部位は徐々に右下腹部から左上腹部へと移動し,CTでも腸間膜の炎症は左上腹部の小腸腸間膜へ移動していた.抗生剤と絶食での保存的治療では改善が得られなかったため,ステロイドを投与した.投与翌日に腹痛は著明に改善し,徐々にステロイドを減量して軽快退院となった.今回われわれが経験した症例は腹痛の部位が移動し非常に稀な臨床症状を呈した.診断に難渋したものの,保存的に治療しえた腸間膜脂肪織炎の1例を経験したため文献的考察を加えて報告する.
  • 牛田 雄太, 平松 聖史, 雨宮 剛, 後藤 秀成, 関 崇, 新井 利幸
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2461-2465
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    今回,われわれは5年間の長期病悩期間を経て手術に至った成人腸回転異常症の症例を経験した.症例は45歳の男性.胆石胆嚢炎を発症した際のCTで腸回転異常症を指摘された.胆嚢摘出術を施行,腸回転異常症は捻転なく無症状のため経過観察となった.その後5年間,食思不振,間欠的な腹痛,嘔吐の消化器症状が持続,増悪するため手術を施行した.開腹すると小腸は360度捻転し,Ladd靱帯により十二指腸が狭窄していた.また,小腸の静脈血は側副血行路として副右結腸静脈から門脈へ還流していた.Ladd手術を施行し,術後経口摂取良好となった.成人例の腸回転異常症は他疾患の精査中,手術中に発見されることが多く,腸回転異常症に由来する症状をきたすことは比較的まれである.さらに5年間の長期病悩期間,結腸静脈系を介する側副血行路の発達を伴うなど,まれな症例であると思われた.
  • 横山 靖彦, 山本 佳生, 佐藤 崇, 中島 裕一, 橘 球, 内田 正昭
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2466-2470
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    症例は39歳,男性.下腹部痛,嘔気を主訴に当院を受診.初診時,右下腹部に限局して圧痛を認めたが,明らかな腹膜刺激症状や筋性防御は認めなかった.腹部単純CTで虫垂の腫大を認め,急性虫垂炎と診断した.微小石灰化を認めたが,腹水や膿瘍の所見は認めず,保存的に加療した.入院後1日目は腹部所見,血液生化学検査所見ともに改善を認めたが,2日目に40℃の高熱,ショック状態となり,虫垂穿孔による腹膜炎と敗血症性ショックを疑い緊急手術を施行した.術中所見では虫垂の穿孔,腹水は認めなかった.術後,昇圧剤や抗生剤などの集学的治療で全身状態は改善し,術後14日目に退院となった.病理組織診断は壊疽性虫垂炎で虫垂に明らかな穿孔は認めなかった.血液培養からはPeptostreptococcus prevotiiが検出された.敗血症とDICを合併した非穿孔性急性虫垂炎の報告は稀であり,若干の文献的考察を含め報告する.
  • 北口 大地, 近藤 匡, 小川 光一, 石橋 敦, 渡邊 宗章, 高屋敷 典生, 大河内 信弘
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2471-2475
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    59歳,男性.右肺下葉腺癌に対する化学療法中に発熱と腰痛が出現し,CTで後腹膜に膿瘍形成を認めた.抗菌薬治療を開始したが発熱と炎症反応の高値が持続したため,経皮的膿瘍ドレナージを施行した.その後,炎症所見の改善を認めたがドレーンより腸液の排出を認めたため,再度CTを施行した.膿瘍と交通する虫垂を認め,虫垂穿孔と診断し,腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.術後経過は良好で,術後11日目に退院した.病理組織診断は虫垂憩室穿孔であった.
    虫垂憩室穿孔の後腹膜膿瘍併発例は稀である.自験例を含む本邦報告6例で術前診断の可否,治療方針を比較検討した.虫垂憩室炎の術前診断には発症早期であること,膿瘍が軽微であることが重要と考えられた.さらに,治療方針として,経皮的膿瘍ドレナージを先行することで待機的腹腔鏡手術の有用性が示唆された.
  • 豊田 秀一, 江口 徹, 当間 宏樹, 岡部 安博, 廣田 伊千夫, 北田 秀久
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2476-2481
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    症例は55歳の男性.46歳時に献腎移植を施行され,プレドニンを含む3剤併用免疫抑制療法を受けていた.突然の強い腹痛を主訴として当院へ救急搬送され,精査により脾弯曲部横行結腸穿孔性腹膜炎と診断され,緊急で開腹下穿孔部結腸部分切除+二連銃型人工肛門造設術を施行した.術直後からタクロリムスを胃管から投与して免疫抑制療法を継続し,移植腎機能を維持したまま術後19日目に軽快退院した.4カ月後にストーマを閉鎖し初回手術後2年6カ月を経過するが,移植腎機能は良好である.移植医療の広がりとともに同様の症例は増えると思われ,緊急を要する病態においても,移植専門医と密に連携をとりながら治療を行う必要性がある.
  • 伊藤 慎吾, 高橋 玄, 小島 豊, 五藤 倫敏, 冨木 裕一, 坂本 一博
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2482-2487
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,男性.既往歴として腎硬化症,特発性血小板減少性紫斑病,脳梗塞,陳旧性心筋梗塞などがあり当院の内科外来へ通院中であった.徐々に増大する腹部腫瘤の精査目的に当科へ紹介となった.腹部CT検査では右下腹部に100mm大の分葉状で不整型の境界明瞭な腫瘍を認めた.下部消化管内視鏡検査では粘膜面に異常は認められず,上行結腸を腹側に圧排する巨大な腫瘤性病変を認めた.Gastrointestinal stromal tumor(以下,GISTと略記)等の悪性腫瘍を疑い,回盲部切除術を施行した.摘出標本の病理組織学的検査では,腫瘍は固有筋層より発生し紡錘形で核異型の強い腫瘍細胞を認めた.免疫組織化学染色ではα-SMAは陽性で,c-kitおよびCD34はいずれも陰性で,平滑筋肉腫と診断した.免疫組織化学染色によって診断された大腸平滑筋肉腫は稀であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 鎌田 順道, 萩原 英之, 加納 恒久, 阿部 豊, 名取 穣治, 内山 喜一郎
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2488-2492
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,女性.右側腹部痛を主訴に当院を受診した.Hb 4.7g/dLの貧血があり,上下部消化管内視鏡検査の結果,上行結腸癌と十二指腸浸潤の診断となった.胸腹部造影CTでは遠隔転移はなかったものの,上腸間膜静脈内に腫瘍塞栓を認めた.入院7日目に結腸右半切除と十二指腸局所切除を施行した.腫瘍塞栓部分の上腸間膜静脈の切除も併せて行ったため,鬱血となった小腸約250cmの切除を余儀なくされた.術後,下痢と電解質異常を生じたが自然軽快した.退院後,補助化学療法としてFOLFOXを10コース施行した.現在,術後9カ月が経過しているが,無再発で経過している.上腸間膜静脈に腫瘍塞栓を伴った大腸癌は稀であり,その手術報告はこれまでに5例のみである.若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 太田 学, 鯉沼 広治, 森嶋 計, 堀江 久永, 佐田 尚宏, 田中 亨
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2493-2498
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    症例は57歳の女性.右下腹部腫瘤の精査で盲腸癌と診断された.術前の腹部超音波検査で肝S2に径10mmの境界明瞭で内部不均一な低エコー腫瘤を認めた.CT検査では淡い低吸収域として認め,造影効果は認めなかった.MRI検査ではT1強調で低信号,T2強調で軽度高信号を示し,superparamagnetic iron oxide(SPIO)造影後T2強調で明瞭な高信号として描出され,拡散強調画像で拡散の低下を認めた.盲腸癌・転移性肝癌と診断し,回盲部切除術と肝部分切除術を施行した.病理組織学的所見で肝reactive lymphoid hyperplasiaと診断された.術後8年再発なく経過している.肝reactive lymphoid hyperplasiaは良性疾患とされているが,術前検査で悪性腫瘍との鑑別が困難であり,外科的切除が行われることが多い.診断,治療の現状と問題点を考察した.
  • 加藤 厚, 清水 宏明, 大塚 将之, 高屋敷 吏, 久保木 知, 宮崎 勝
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2499-2504
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    症例は26歳,女性.肝内側区域を占拠する肝腫瘍に対して左肝切除,胆管切除,胆管空腸吻合術を施行した.病理所見では肝原発内分泌腫瘍であった.術後,胆管空腸吻合部に留置したドレーンから胆汁様の排液を認め,ドレーン造影でsegment 5の胆管枝が描出され,腸管との交通のない離断型胆汁瘻の診断となった.離断胆管領域の肝容積が大きく再手術による吻合は,侵襲が高度で炎症や癒着により困難であることから,経皮経肝胆道ドレナージを施行後,このルートから透視下に挙上空腸を穿刺貫通させて離断された胆管と挙上空腸の内瘻化に成功した.離断胆管による胆汁瘻に対しては,胆管空腸吻合などの外科手術や無水エタノールによるbiliary ablationなどによる治療が報告されているが,低侵襲で離断胆管領域の肝実質機能を温存することが可能な経皮経肝胆道内瘻化術は,離断型胆汁瘻に対する有用な治療法の一つと考えられた.
  • 川井 陽平, 永田 二郎
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2505-2509
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    症例は8歳,男児.上腹部痛と嘔吐を主訴に当院救急外来を受診した.身体所見では,心窩部から右側腹部にかけて圧痛を認めた.腹部超音波検査と造影CT検査では壁肥厚を伴った胆嚢の腫大を認めた.胆嚢壁は造影効果に乏しく,胆嚢頸部に腫瘤像を認めた.
    DIC-CT検査で胆嚢管の途絶像を認めた.壊疽性胆嚢炎と診断し,腹腔鏡下手術を施行した.腹腔鏡にて観察すると,胆嚢は暗赤色に腫大し胆嚢管を中心に反時計方向に360度捻転していた.捻転を解除した後,胆嚢摘出術を施行した.合併症なく術後3日目に退院した.小児期に発症する胆嚢捻転症はまれな疾患である.本邦では,10歳以下の小児では45例の報告がある.最近では,術前正診率は高まっており,小児の急性腹症の鑑別として念頭に置くことが重要と考える.
  • 後藤 航, 金沢 景繁, 塚本 忠司, 清水 貞利, 山下 好人, 西口 幸雄
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2510-2515
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.9年前に胆石性胆嚢炎に対して開腹下胆嚢摘出術が施行された.2年前に血清肝胆道系酵素値の上昇を認め,精査の結果,肝外胆管の狭窄が認められた.同部の生検組織で悪性所見は認められず,胆管ステントが留置された.3カ月前より頻回に胆管炎を生じるようになり,難治性良性胆管狭窄症の診断のもと手術を施行した.術中,胆管狭窄部に一致して腫瘤性病変が認められ,胆管癌を否定しえなかった.そこで,同部を術中迅速組織診に提出したところ,神経腫等の良性疾患が疑われたため肝外胆管切除術および胆管空腸吻合術を施行した.術後の病理組織診では胆管断端神経腫と診断された.術後経過は良好で,術後第10病日目に退院した.胆管断端神経腫は稀な疾患で,術前診断は困難であり,胆管悪性腫瘍との鑑別が問題となる.自験例では術中迅速組織診により悪性疾患を否定し,過剰な手術を回避することができた.
  • 赤羽 慎太郎, 福田 三郎, 田澤 宏文, 先本 秀人, 江藤 高陽, 西田 俊博
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2516-2523
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,男性.検診で肝機能異常を指摘され,当院を紹介受診.血液検査で肝胆道系酵素の上昇を認めた.造影CTで胆管拡張と,膵鉤部に境界不明瞭な28mm大の腫瘍性病変を認めた.乳頭部の生検で高分化腺癌であり,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術,D2郭清を施行.病理所見では腺癌が30%程度,内分泌癌が70%程度を占めており,mixed adenoneuroendocrine carcinoma(以下,MANEC)と診断した.経過は良好で,術後34日目で退院.術後補助化学療法としてCPT-11/CDDPを開始し,術後10カ月で再発徴候は認めていない.MANECは早期の段階から肝転移やリンパ節転移を認め,予後不良とされるが,胆管に発生したMANECについては報告例が少なく,術後治療には確立されたものはないのが現状である.今回,下部胆管に発生したMANECの1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.
  • 佐野 力, 清水 泰博, 千田 嘉毅, 夏目 誠治, 木下 平, 二村 雄次
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2524-2531
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    67歳,女性.24歳時に胆石症で胆嚢摘出術(術後3カ月の入院).半年後に閉塞性黄疸となり,左肝管十二指腸吻合・胃空腸吻合・胆管内チューブ留置術を施行.2010年12月,肝胆道系酵素の上昇を契機に胆管癌と診断.CTでは肝門部から膵内に至る辺縁優位に濃染する低吸収腫瘤が,膵・十二指腸へ浸潤していた.上部消化管内視鏡では,下行脚に易出血性不整粘膜を認め,生検結果は腺癌であった.2011年2月,肝右葉切除・尾状葉切除・膵頭十二指腸切除を施行.病理診断は,膵・十二指腸に浸潤する低分化型腺癌で,膵頭部周囲リンパ節転移陽性であった.補助療法は施行せず,術後50カ月無再発生存中.左肝管十二指腸吻合部が開存していたため,局所進展が高度でも黄疸発症しなかった.長期のステントチューブ留置が,慢性刺激となり発癌した可能性がある.進展度に応じた術式選択が重要である.
  • 津久井 秀則, 佐久間 康成, 笹沼 英紀, 堀江 久永, 安田 是和, 佐田 尚宏
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2532-2537
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    右側肝円索は,胎生期における右側臍静脈遺残に起因するとされ,門脈右枝に臍部が存在し,同部に肝円索が付着する解剖学的変異と考えられている.今回,複雑な胆管分岐形態を示した右側肝円索を伴う肝門部胆管癌の切除例を経験した.症例は62歳の男性.皮膚黄染を主訴に当院を受診,造影CTで胆管壁の肥厚と肝内胆管の拡張を認め,さらに胆嚢が肝円索の左側に位置する右側肝円索を認めた.胆汁細胞診からはClass IVが検出され,右側肝円索を伴う肝門部胆管癌と診断した.門脈分岐形態を考慮し後区域枝のみ塞栓術を行い,手術は肝後区域切除・肝外胆管切除・胆管空腸吻合術を行った.本症例では胆管分岐においてB2から後区域枝が分岐する形態を示す他,その他の胆管分岐形態からも,右側肝円索における左右対称性の理論に合致するものと考えられた.右側肝円索には脈管の分岐異常を伴うことが多く,術前の詳細な画像検索と慎重な手術計画が重要と考える.
  • 安川 大貴, 京極 高久, 住井 敦彦, 長井 和之, 伊丹 淳, 橋本 公夫
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2538-2543
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    退形成膵癌は浸潤性膵管癌の1亜型とされ,膵管癌の中では稀な組織型である.また,膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasms,以下IPMN)は膵癌の前駆病変としてだけでなく,通常型膵癌を併存することが知られているが,退形成膵癌を併存した報告は少ない.今回,IPMNに退形成膵癌を併存した1例を経験したので報告する.症例は61歳,女性.心窩部痛を主訴に当院を受診した.上部消化管内視鏡検査では胃体上部後壁に2型腫瘤を認め,造影CT検査で胃体後壁から膵体尾部,脾臓にかけての巨大腫瘤を認めた.膵脾浸潤を伴う胃癌と術前診断し,左上腹部内臓全摘出術を施行したが,術後の病理組織学検査では,胃脾浸潤を伴う多形細胞型退形成膵癌とIPMN(膵管内乳頭粘液性腺癌)の併存と診断された.
  • 井川 理, 阿辻 清人, 山口 明浩, 柿原 直樹, 藤井 宏二, 谷口 弘毅
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2544-2548
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    術前に診断し,緊急手術として腹腔鏡下脾固定術を施行できた症例を経験したので報告する.症例は15歳の女性で,左側腹部痛を主訴に当院を受診した.腹部造影CTでは脾門部にwhirl signを認め,脾が造影されなかったため遊走脾に伴う脾捻転と診断し,緊急手術を施行した.腹腔鏡下に観察したところ,脾臓は脾門部で180度捻転していた.捻転を整復したところ色調が改善したため,脾固定術を施行して脾を温存する方針とした.横隔膜下の後腹膜に切開を加えポケットを作成して脾臓を挿入し,腹膜と胃脾間膜を縫合固定した.退院時の経過観察のCTにても再捻転は認めず,術後1年8カ月後も問題なく経過している.本邦で捻転に対する緊急手術として本術式を施行した報告は自験例が初めてであった.小児や若年者では脾機能温存のため,緊急手術であっても可能であれば腹腔鏡下脾固定術を考慮すべきと考えられた.
  • 小池 佳勇, 長坂 暢, 橋本 瑞生, 水谷 哲之, 佐藤 文哉, 坂口 憲史
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2549-2554
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    患者は69歳,女性.10年前に左乳癌にて手術が行われ,無再発で経過中,脾臓に偶然低吸収腫瘤を認めた.精査で他部位に悪性腫瘍は認めず,乳癌転移あるいは原発性脾腫瘍と考えた.画像では確定診断がつかず,診断的治療のために脾臓摘出術を施行した.病理検査で,EBV関連炎症性偽腫瘍様濾胞樹状細胞性腫瘍と診断した.脾臓のEBV関連炎症性偽腫瘍様濾胞樹状細胞性腫瘍は近年報告が散見されている稀な腫瘍である.今回われわれは,脾EBV関連炎症性偽腫瘍様濾胞樹状細胞性腫瘍を経験したため報告する.
  • 福岡 伴樹, 越川 克己, 真田 祥太朗, 澤木 康一, 大屋 久晴, 佐野 正明
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2555-2561
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    後腹膜脂肪肉腫は比較的稀な疾患で切除が唯一確立した治療であるが,しばしば再発を生じる.頻回手術により比較的長期の生存を得ている症例を報告する.50歳,女性.左後腹膜腫瘍に対し腫瘍切除術を施行.重量4,000g,病理組織学検査で高分化型脂肪肉腫であった.その後,再発を反復し8年間で6度の手術を行った.手術2:左総腸骨動脈前面に再発し,尿管と剥離し腫瘍を切除した.手術3:左後腹膜に再発した腫瘍を切除し,腸間膜を損傷したためS状結腸切除術も行った.手術4:左後腹膜に複数個の再発をきたし,腫瘍切除術と左腎摘,S状結腸切除術を併施,術後に腫瘍剥離面への放射線治療を行った.手術5:腹腔内への再発を認め手術,空腸に浸潤があり合併切除した.手術6:下行結腸外側に再発し,結腸合併腫瘍切除を施行した.その後,再発したが周囲への浸潤が強く切除を断念した.経過中の腫瘍は全て高分化型脂肪肉腫であり脱分化型への変性は認めていない.
  • 栃本 昌孝, 渡邊 透, 高橋 裕季, 大島 正寛
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2562-2565
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    症例は40歳台,女性.右上腹部痛と頻回の嘔吐を主訴に当院救急外来へ搬送された.腹部造影CTで,横行結腸間膜ヘルニアならびに十二指腸水平脚における逆行性腸重積の所見を認めた.ブチルスコポラミン投与で腹痛は著明に改善し,再度,腹部造影CTを施行したところ,腸重積は改善していた.しかし,横行結腸間膜ヘルニアは残存していたため,待機的手術を行った.開腹すると,Treitz靱帯近傍にヘルニア門が確認されたが,術前のCTでみられた陥入小腸はみられず,開腹の時点で既に腹腔内ヘルニアは解除していた.ヘルニア嚢内を確認し,ヘルニア門を縫縮して手術を終えた.本邦では横行結腸間膜ヘルニアに腸重積を合併した症例の報告は極めて稀であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 竹内 昭博, 山出 尚久, 桐山 茂久, 北谷 純也, 宮本 篤, 嶋 廣一
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2566-2572
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,女性.腹部腫瘤を自覚され,近医より当科紹介となった.造影CTでは胃背側に造影効果に乏しい10×10cmの巨大な嚢胞性腫瘤を認めた.MRIや腹部血管造影検査などでも確定診断には至らず,診断的治療を兼ねて手術を行った.腫瘍は網嚢内に存在し,唯一連続していた大網とともに摘出した.病理組織学的検査にて大網原発の粘液線維肉腫(myxofibrosarcoma:MFS)と診断された.術後11カ月目に術前とほぼ同じ部位に再発を認め,再手術を行った.腫瘍は胃後壁・膵体尾部・横行結腸間膜と周囲臓器に広範囲に浸潤を認めたが,胃全摘,拡大右半結腸切除,膵体尾部・脾切除,胆嚢摘出術を行うことで一括に切除できた.しかし,再手術後3カ月目に肝表面に播種と思われる腫瘍を認め,化学療法を行ったが初回手術から2年1カ月後に原病死した.今回,MFSという非常に稀な症例を経験したので,若干の文献的考察を含めて報告する.
  • 稲生 照久, 市川 俊介, 藤竹 信一, 上村 孝法, 和田 応樹, 禰宜田 政隆
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2573-2576
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    Spigelianヘルニアは腹壁ヘルニアの中でも稀な疾患であるが,外傷により発症したものはさらに少ない.今回われわれは外傷を契機に発症したSpigelianヘルニアの1例を経験したので報告する.症例は67歳,男性.牛の角が腹部をかすめ受傷した翌日から右下腹部の膨隆を自覚し,受傷3日後に当院を受診した.右側腹部に縦に走る線状の擦過傷と,その尾側に小児手拳大の膨隆を認め,用手的に還納可能であったが一部は膨隆したままだった.腹部CTにて右側腹直筋外縁から連続する筋膜の欠損と,同部より脱出する腸管を認めた.外傷性腹壁ヘルニアの診断で待機的に手術を行い,腹直筋外縁のSpigelian腱膜に3×3cmの腹膜・筋膜の欠損と筋膜間に嵌り込んだ大網を認め,ベントラレックスヘルニアパッチを用いて修復した.術後経過は良好で,術後2日目に退院し,現在までの15カ月間,再発を認めていない.
  • 井上 真岐, 門野 潤, 中薗 俊博, 基 俊介, 馬場 淳徳, 井本 浩
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2577-2581
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    症例は73歳の男性で,右足背Bowen病に対し,原発巣切除および右鼠径リンパ節郭清術を施行された.糖尿病,肝硬変を伴う肝細胞癌の既往があった.術後16カ月目に右鼠径部の膨隆を自覚した.右内鼠径輪尾側に膨隆を認め,CTで右大腿ヘルニアと右下腹壁動脈の外側にヘルニア嚢を認め,複合ヘルニアと診断した.手術は前方アプローチで行った.大腿静脈前面と下腹壁動脈外側の2箇所に鼠径靱帯背側から脱出するヘルニア嚢を認めた.二つのヘルニア嚢は下腹壁動脈を挟み連続していた.以上の所見より,日本ヘルニア学会分類の特殊型ヘルニアと診断した.ヘルニア嚢をそれぞれ高位結紮し,mesh plugとonlay patchを用いて修復した.術後17カ月経過したが,再発は認めていない.鼠径リンパ節郭清による鼠径管後壁の脆弱化,糖尿病による組織の脆弱化がヘルニアの原因と考えられ,mesh plugによる修復が有効であった.
  • 宮永 克也, 多保 孝典, 林 秀樹, 千葉 幸夫, 稲井 邦博, 内木 宏延
    2015 年 76 巻 10 号 p. 2582-2586
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    症例は83歳の女性で,右臀部皮下腫瘤を自覚し当院受診.腹部・骨盤CTとMRIにて,肝下縁から連続して殿筋内,殿筋背側の皮下に連続する軟部腫瘤影を指摘.術前に確定診断には至らず,診断目的に右臀部皮下腫瘤核出術を施行し,短期間の抗菌薬投与のみで経過観察となった.術後3カ月の腹部・骨盤CTでは,腹腔内外の軟部腫瘤様病変は完全に消失していた.その後,切除標本の最終病理結果にて放線菌症と診断されたが,既に病変は消失していたので経過観察とした.術後6年経過した現在まで再発を認めていない.腹部放線菌症は比較的稀で悪性腫瘍との鑑別が困難となるため,非定型的な腹部腫瘤の場合,本症例も念頭に置き,積極的な生検を行って確定診断を得ることで,過大手術を防止しうることが示唆された.
支部・集談会記事
編集後記
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