2015 年 76 巻 11 号 p. 2817-2823
症例は76歳,男性.全身倦怠感を主訴に近医を受診し,血液検査で白血球数とCRPの上昇を指摘され,精査加療目的に当院紹介となった.来院時の血液検査で白血球数12,030/μl,CRP 16.6mg/dlと上昇を認めた.造影CTで骨盤内右側に6×3cm大の辺縁に造影効果を伴う液体貯留を認め,膿瘍形成が疑われた.2カ月前のCTで同部に造影効果を伴い拡張した右精管を認め,精管炎が示唆された.骨盤内の膿瘍は精索膿瘍が最も疑われた.抗菌薬投与による保存的治療を開始したが反応に乏しく,第4病日に開腹膿瘍ドレナージ術を施行した.術中に提出した膿よりActinomyces属が同定された.第18病日(術後14日目)に炎症反応の再燃を認めたが,抗菌薬投与を必要とせず改善を認め,第27病日(術後23日目)退院となった.稀な疾患とされる精索膿瘍の1例を経験したため報告する.