日本臨床外科学会雑誌
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症例
多発腸重積を発症した多発性小腸脂肪腫の1例
西村 貞徳平田 裕久森田 剛史
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2015 年 76 巻 12 号 p. 3004-3007

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抄録

症例は64歳,男性.1週間前から続く断続的な腹痛があり,当院外来を受診.外来で経過観察されていたが,腹痛の増強と嘔吐があり再度受診.腹部CTでは小腸に脂肪組織と等吸収値の結節病変が多発しており,結節病変が先進部となって,腸重積を起こしているような画像であった.重積部から口側の小腸は拡張してイレウスを呈しており,緊急手術を行った.開腹所見では小腸の合計2箇所で腸重積を起こしており,小腸全域に大小不同の腫瘤を触知して,腸重積は腫瘤が先進部となっていると考えられた.腸重積を整復後,先進部となっている2箇所の小腸を部分切除した.切除標本では大小不同の黄色の弾性軟の粘膜下腫瘍が多発していた.病理組織診断では脂肪腫の診断となった.術後39日目に退院し,術後3年8カ月で腸重積の再発を認めていない.多発性小腸脂肪腫によって腸重積が多発することは非常に稀であり,若干の文献的考察を加え報告する.

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