2015 年 76 巻 12 号 p. 3018-3022
症例は80歳,女性.嘔吐を主訴に来院し,腹部CTにて骨盤内の嚢胞性病変およびclosed loop形成を伴う絞扼性イレウスを指摘され,緊急手術を施行した.虫垂先端に生じた径10cmの嚢胞性腫瘤に牽引された虫垂が絞扼帯となり,回腸末端が絞扼を受けており,回盲部切除術を施行した.術後の病理組織診断にて嚢胞性腫瘤はlow-grade appendiceal mucinous neoplasmと診断された.絞扼性イレウスを合併する虫垂粘液嚢腫は今回検索しえた範囲で,これまで本邦で自験例を含め13例が報告されたのみであり,極めて稀である.本症例では虫垂先端に発生した粘液嚢腫の重みにより,虫垂自体が絞扼帯となる興味深い病態を呈していたため,ここに報告する.