抄録
症例は50歳,女性.2013年4月,血便および健診超音波検査での肝腫瘍精査目的で受診した.下部消化管内視鏡検査で直腸Raに隆起性病変を認め,生検で低分化腺癌および内分泌細胞癌の併存と診断された.上部消化管内視鏡検査ではA型胃炎に伴う多発胃カルチノイド腫瘍が観察された.腫瘍マーカーはNSEが45.8ng/mlと高値を示した.CT検査では肝S4に5cm大の腫瘤を認め,直腸傍リンパ節も腫大していた.以上より,直腸腺癌もしくは直腸内分泌細胞癌・肝転移の診断で,低位前方切除術+肝S4部分切除術を施行した.病理組織学的検査では,直腸病変の表層には高分化から中分化腺癌を認め,その深層に内分泌細胞癌が混在していた.肝転移巣およびリンパ節転移巣は内分泌細胞癌の転移であった.現在,術後1年経過するが無再発生存中である.