日本臨床外科学会雑誌
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症例
遅発性外傷性横隔膜ヘルニア嵌頓の1例
多田 和裕酒井 昌博
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2015 年 76 巻 3 号 p. 494-497

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抄録

症例は5年前に右肋骨骨折の既往のある87歳の女性で,前夜からの心窩部痛を主訴に翌昼に受診された.受診時には呼吸苦も認めた.胸部単純X線検査で右胸郭の透過性低下,鏡面像,縦隔の左方偏位,陳旧性右肋骨骨折を認めた.胸部~骨盤単純CTで,右胸郭内に小腸脱出と胸水貯留,右肺の圧排と縦隔の左方偏位を認め,遅発性外傷性横隔膜ヘルニア嵌頓,絞扼性イレウスと診断した.CT撮像後,ショックバイタルとなったため緊急手術を行った.右肋弓下切開で開腹すると,小腸が,右横隔膜天蓋部のヘルニア門から胸腔内へ脱出していた.ヘルニア門を切開し,小腸を引き出すと嵌頓した部分は壊死しており,同時に多量の胸水を認めた.虚脱肺が拡張すると同時にバイタルサインは著明に改善した.小腸切除と胸腔ドレーン挿入,横隔膜修復を行い,手術を終了した.遅発性外傷性横隔膜ヘルニアは嵌頓により急激で致死的な症状を呈すことがあり,早急な対応が必要である.

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