2015 年 76 巻 3 号 p. 503-509
症例1は54歳,男性.発熱,嘔気,腰痛を主訴に当院を受診した.精査にて肝占拠性病変と胃粘膜下腫瘍を指摘された.症例2は73歳,男性.発熱,めまい,食欲不振を主訴に当院を受診した.精査にて肝占拠性病変と胃粘膜下腫瘍を指摘された.両例とも臨床症状から肝膿瘍を疑い抗生物質投与を行ったところ,症状は改善し,肝病変も消失した.肝膿瘍治療後に腹腔鏡下胃局所切除術を施行し,経過は良好であった.胃粘膜下腫瘍の病理診断は症例1が神経鞘腫,症例2がGISTであった.胃内細菌がDelleから腫瘍内壊死組織に感染し,経門脈経路で肝に到達,肝膿瘍を形成したと考えられた.肝膿瘍を契機に発見された胃粘膜下腫瘍の報告は稀であり,貴重な症例と考えられたため,文献的考察を加えて報告する.