2015 年 76 巻 3 号 p. 550-555
症例は66歳の女性で,2010年に健診にて上部消化管造影検査を施行された.検査後,下剤を内服するも水様便の排出のみで白色便は認めなかった.検査後4日目より腹痛が出現し,近医の腹部CT検査にてイレウスを指摘された.検査後6日目には頻回の嘔吐を認めたため,当科紹介となった.腹部CT検査にてS状結腸穿孔と造影剤の漏出を認め,S状結腸穿孔の診断にて緊急手術となった.腹腔内には黄白色の混濁した腹水と壊死したS状結腸を認め,Hartmann手術を施行した.
消化管造影検査後の大腸穿孔はまれであり,注腸検査では10,000例中2~4例と報告されているが,上部消化管造影検査ではさらに頻度が低い.今後,高齢化社会に伴い,便秘傾向の被験者が増加する可能性が高いことが予想される.検査後のバリウム排泄の徹底や,排泄困難例の厳密な管理が求められる.