日本臨床外科学会雑誌
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症例
子宮内避妊器具が原因と思われたS状結腸穿通を伴う腹部放線菌症の1例
土屋 朗之田中 直樹坂田 直昭森川 孝則内藤 剛海野 倫明
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2015 年 76 巻 3 号 p. 603-607

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抄録

症例は60歳台,女性.卵巣腫瘤を含む腹部多発腫瘤を認め,腹膜転移を伴う卵巣癌を念頭に置いた精査中に,卵巣腫瘤のS状結腸穿通を認めた.その後,腹壁腫瘤の増大による炎症反応の著明な上昇と腹膜刺激症状を認め,腹腔内多発膿瘍を疑い緊急手術を施行した.手術は膿瘍ドレナージの上,子宮・付属器を切除し,S状結腸は温存し一時的回腸人工肛門を造設した.病理組織検査でグラム陽性線状細菌が多数観察され,細菌培養検査でActinomyces israeliiを同定,腹部放線菌症と診断した.本症例では,子宮内避妊器具(IUD)が長年留置されていたため腹部放線菌症を発症したものと考えられた.術後再発予防のためにペニシリン系抗菌薬を6カ月間投与し,現在まで術後2年8カ月間再発は認めていない.IUD長期留置に伴い腹部放線菌症を発症し多発腹腔内膿瘍のS状結腸穿通,腹壁浸潤を呈した稀な症例を経験したので報告する.

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© 2015 日本臨床外科学会
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