抄録
輪状甲状靱帯切開は,外傷医療や挿管困難症例における外科的気道確保のために行われることが多いが,頭頸部癌による呼吸不全に対して輪状甲状靱帯切開が奏効した2例を経験したので報告する.症例1は59歳の男性.咽頭癌の局所再発巣から急激な大量出血による誤嚥で呼吸不全となったため,気管挿管を行った.頸部リンパ節転移が前頸部から輪状甲状靱帯尾側の皮膚まで浸潤していたため気管切開は危険と判断し,輪状甲状靱帯切開を施行した.退院後は在宅にて最期まで過ごされた.症例2は70歳の男性.甲状腺未分化癌の気管浸潤のため呼吸不全となり,経鼻気管挿管され鎮静下で人工呼吸器管理となった.輪状甲状靱帯切開術を施行し人工呼吸器から離脱できた.在宅診療を目指していたが,次第に悪液質が進行し病院で永眠された.自験例のように気管切開の時期を逸した場合も,輪状甲状靱帯切開を緩和医療として施行し呼吸状態の安定化が得られると考えられた.