日本臨床外科学会雑誌
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症例
消化管穿孔で発見された前額部皮膚血管肉腫全身転移の1例
後藤 晃紀長嶺 弘太郎亀田 久仁郎鈴木 紳祐久保 章竹川 義則
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キーワード: 血管肉腫, 消化管, 穿孔
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2015 年 76 巻 4 号 p. 677-683

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抄録

血管肉腫は稀な疾患で,消化管に転移することは極めて珍しい.今回われわれは,消化管穿孔を契機に発見された血管肉腫の1例を経験したので報告する.症例は83歳の男性で,上腹部痛を主訴に当院を受診.精査で消化管穿孔による汎発性腹膜炎と診断し緊急開腹手術を施行した.開腹するとTreitz靱帯近傍の空腸に径2cm大の腫瘍を認め,その中心が穿孔していた.同様の腫瘍を胃・小腸・下行結腸にも認め,各部を切除し再建を行った.切除標本の粘膜面はいずれも2型腫瘍様の形態で,褐色隆起の中心に壊死性潰瘍を伴っていた.免疫染色で第VIII因子・CD31・CD34で陽性を示すことから病理組織学的に血管肉腫と診断した.術後消化管出血とイレウスを併発し,術後第47病日に肺炎による呼吸不全で死亡し,剖検では肺両葉と肝臓に転移を認めた.2年前から認められていた前額部皮疹の生検を術後に行ったところ血管肉腫の診断を得たことから,前額部皮膚原発血管肉腫の全身転移と考えられた.

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