2015 年 76 巻 4 号 p. 693-698
症例は44歳,女性.2010年12月に右乳房腫瘤を指摘されていたが良性として放置されていた.2011年5月,腫瘤が急速に増大してきたため当院を受診した.右乳房に9.0×7.0cmの腫瘤を認めた.針生検にて境界病変の葉状腫瘍と診断し,右乳房切除術と腋窩リンパ節のサンプリングを行った.病理組織学的検索では,境界病変の葉状腫瘍内に非浸潤性乳管癌(以下DCIS)と非浸潤性小葉癌(以下LCIS)が併存していた.術後追加治療を行うことなく経過観察中であるが,術後3年6カ月経過した現在,再発の徴候を認めていない.葉状腫瘍に乳癌が併存した症例は稀であり,殊に本症例のように異なった組織型の乳癌を複数併存した症例について我が国では皆無である.葉状腫瘍内の乳癌発生は稀であり,偶然の併発と考えるのが妥当と思われるが,腫瘍が巨大なことが多いため併存病変の可能性を考え多数切片病理検索が望ましいと考えられた.