2015 年 76 巻 4 号 p. 803-808
症例は52歳の女性.盲腸癌のため回盲部切除術,D3郭清を施行した.初回手術より9年後に,胸腹部CT検査で肝S6に接する3cm大の嚢胞性腫瘤を指摘したが経過観察となり,14年後には同部位の腫瘤は8cmと著明に増大し,胸腹壁・横隔膜・肝S6への浸潤を疑った.腹壁原発の悪性腫瘍を第一に考え手術を施行した.病理組織学検査では14年前に切除した盲腸癌の胸腹壁横隔膜転移と診断した.組織型は原発巣の中分化型腺癌ではなく粘液癌であった.初回手術時の盲腸癌は中分化型腺癌が主体であったが,腫瘍の深部浸潤部では粘液癌の成分も認め,さらに深達度はSEであったことから,粘液癌細胞が腹腔内に播種し,胸腹壁に再発したものと考えた.原発巣切除から再発までに9年,経過観察の上14年後に根治切除しえた症例は極めて少なく,文献的考察を加えて報告する.