日本臨床外科学会雑誌
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症例
正中弓状靱帯圧迫症候群による腹腔動脈根部狭窄を合併した後腹膜血腫の1例
釜田 茂幸藤田 昌久新田 宙石川 文彦伊藤 博
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2015 年 76 巻 4 号 p. 916-921

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抄録
症例は54歳の男性で,胆石膵炎の疑いで当院へ搬送された.腹部CTでは中結腸動脈瘤と後腹膜血腫があり,腹腔動脈根部の狭窄が認められた.腹部血管造影でも腹腔動脈根部の狭窄があり,上腸間膜動脈から腹腔動脈への逆行性血流を認め,正中弓状靱帯圧迫症候群(median arcuate ligament syndrome:以下,MALS)と診断した.また,横行膵動脈に数珠状拡張と狭窄があり,segmental arterial mediolysis(以下,SAM)により形成された動脈瘤が後腹膜血腫の原因と考えられた.IVRによる塞栓では血流障害による腸管壊死の可能性があり,開腹手術で二つの動脈瘤と結腸を切除し,正中弓状靱帯の部分切除により血流正常化を行った.本症例では,MALSの合併による腹腔内動脈の血行動態に変化があり,これらがSAMにより形成された動脈瘤の破裂に関与した可能性も考えられた.
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© 2015 日本臨床外科学会
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