日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
石灰乳胆汁を伴った胆嚢腺腫内早期癌の1例
本田 志延岡村 茂樹兼田 博
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 76 巻 5 号 p. 1164-1168

詳細
抄録

症例は52歳の女性,悪心と右背部痛を主訴に当院外来を受診した.腹部は平坦で右季肋部に軽度の圧痛があり,右背部に放散痛を認めた.腹部単純X線写真で右上腹部に5.5×2.5cmの嚢状の高吸収陰影,腹部超音波検査で胆嚢結石を認め,胆嚢結石および石灰乳胆汁による仙痛発作の診断で入院となった.胆道造影CTでは左右肝管・総胆管に異常を認めず,腹腔鏡下胆嚢摘出術が行われた.術後摘出標本では胆嚢粘膜に最大径3.5mmまでの多発する小隆起を認め腺腫と診断され,そのうち体部の最大のIp型の病変には核異型や構造異型を伴う増殖像を呈する腺腫内早期癌を認めた.術後経過順調で,病理組織学的診断から治癒切除と判断し追加切除は行っていないが4年間無再発生存中である.石灰乳胆汁と腺腫や癌,粘膜化生との関連は明らかではないが,背景となる胆嚢内環境がそれらに影響する可能性はあると思われ,今後の研究成果が待たれる.

著者関連情報
© 2015 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top