2015 年 76 巻 5 号 p. 965-969
中心性単発の乳頭腫切除後19年後に発見された非浸潤性乳管癌の1例を経験した.症例は68歳,女性.乳癌検診で異常を指摘され当科を受診した.既往歴として19年前に右乳頭直下の乳房腫瘤の切除歴があった.病理組織診断は乳管内乳頭腫であり,切除断端は陽性であった.マンモグラフィ検査で右M領域に多形性区域性の石灰化を認めた.超音波検査では右乳房C領域に高輝度点状高エコーの集簇を伴う低エコー領域を認めた.吸引式針生検術を施行したところ非浸潤性乳管癌と診断された.遠隔転移のないことを確認後,胸筋温存乳房切除術+センチネルリンパ節生検術を施行した.病理組織診断は非浸潤性乳管癌であった.乳頭腫は全体として乳癌の危険因子と推定されている.本症例は異型を伴わない中心性乳頭腫が長い年月を経て癌化したと考えられる症例であり,稀なものと考えられた.