日本臨床外科学会雑誌
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症例
脾摘を先行し術前化学療法を行った肝硬変を有する炎症性乳癌の1例
森川 あけみ二村 学兼松 昌子森 龍太郎森光 華澄吉田 和弘
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2015 年 76 巻 5 号 p. 970-974

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抄録

症例は40代,女性.5年前からアルコール性肝硬変で近医加療中であった.1カ月前から左乳房の張り感,痛み,しこりを自覚し当科受診された.初診時左乳房の腫瘍は7cm大で発赤,浮腫,乳頭陥凹を認め,針生検でエストロゲンレセプター(ER):0,プロゲステロンレセプター(PgR):0,HER2:0,Ki-67:65.7%,T4dN1M0 Stage IIIBの局所進行乳癌であった.初診時肝機能はChild AであったがPlt 3.8×104/μLと低値のため脾臓摘出術を先行した.血小板の速やかな上昇を確認後,術前化学療法としてweekly PTX 9クール施行したところcCRとなり11カ月後に胸筋温存乳房切除術+腋窩リンパ節郭清を施行した.病理検索では非浸潤性乳管癌(DCIS)の遺残のみでpCRであった.化学療法を必要とする肝硬変合併症例において,脾摘は安全に化学療法を遂行する有効な補助手段であった.

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