2015 年 76 巻 5 号 p. 961-964
男性の非浸潤性乳管癌の頻度は4.8~7.0%とされ,稀である.今回われわれはPagetoid癌様の臨床症状を呈し,男性に発症した非浸潤性乳管癌を経験したので報告する.症例は63歳の男性.3年前より左乳頭の腫脹があり,増大したため受診した.初診時には左乳頭の腫脹・潰瘍形成を認めた.乳房超音波検査で左E領域に直径1.5cmの低エコー域を認めた.マンモグラフィ検査では,左乳頭直下に集簇する淡く不明瞭な石灰化病変を認めた.乳房造影MRI検査では造影効果のある腫瘤像として描出された.針生検を施行したところ,乳管癌と診断された.胸筋温存乳房切除術および腋窩リンパ節郭清術を施行した.病理組織学的検査では,非浸潤性乳管癌,エストロゲンレセプター陽性,プロゲステロンレセプター陽性,HER2陰性,pTis,pN0,M0=Stage 0と診断された.術後6年6カ月目の現在,再発・転移を認めていない.