日本臨床外科学会雑誌
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症例
抗アセチルコリンレセプター抗体高値を伴った赤芽球癆合併胸腺腫の1例
宮坂 大介新関 浩人浅野 賢道松永 明宏山口 晃司池田 淳一
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2015 年 76 巻 5 号 p. 975-980

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抄録

胸腺腫は様々な免疫疾患を合併する.今回われわれは,抗アセチルコリンレセプター抗体(以下抗AChR抗体)高値を伴った赤芽球癆合併胸腺腫の1例を経験したので報告する.症例は61歳の女性.検診で胸部異常影を指摘され当院受診.胸部造影CT検査で前縦隔に約6cm大,均一な造影効果を伴う境界明瞭な腫瘤影を認め,胸腺腫疑いと診断されたほか,網状赤血球数低下を伴う正球性正色素性貧血を認め,骨髄検査で赤芽球癆と診断.抗AChR抗体高値も認めたが,臨床的に重症筋無力症の症状を認めず.胸腺腫に対する拡大胸腺摘出術を施行後,経過良好で第10病日退院.病理所見では胸腺腫(WHO分類typeAB,正岡分類II期)と診断.約1カ月後より再び貧血の進行を認めたため,免疫抑制剤(シクロスポリン)による治療を開始.1週間後より貧血に改善傾向が見られ,以後,輸血非依存の状態を維持しており,重症筋無力症の症状も顕在化していない.

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© 2015 日本臨床外科学会
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