抄録
症例は73歳,男性.2007年10月に胸部異常陰影から,肺扁平上皮癌と診断された.腎静脈以下の下大静脈の欠損があり,奇静脈・半奇静脈などの側副血行が発達していた.奇静脈・右主気管支への浸潤が疑われ,術前化学療法を施行し,著効した.2008年4月,開胸時奇静脈との剥離は可能で,右上葉切除術を施行した.病理学的に癌細胞を認めず,pCRと診断された.術後経過観察中にCEAの上昇があり,2009年5月に肝転移を伴うS状結腸癌に対して,S状結腸切除術および肝部分切除術を施行した.2010年12月に吻合部局所再発,さらに,2014年5月に右肺下葉原発の異時性多発肺癌に対して手術を施行した.
腎静脈以下の下大静脈欠損症の患者に対して外科的治療を要する場合には,側副血行路として奇静脈系あるいは後腹膜を介しており,肺癌などの胸部手術や大腸癌などの腹部手術の際には出血に対する注意と血流の維持に留意することが大切である.