日本臨床外科学会雑誌
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症例
鼠径部Maydl's herniaの1例
田島 正晃森井 雄治木下 忠彦
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2015 年 76 巻 6 号 p. 1532-1536

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抄録

Maydl's herniaはヘルニア嚢内に複数の腸管ループが嵌頓するヘルニアで,W型に脱出することにより,腹腔内腸管の腸間膜が強く絞扼され,血行障害が腹腔内腸管により高度に出現するのが特徴である.症例は58歳の男性,作業中に右鼠径部が膨隆したまま戻らなくなり,救急搬送された.右鼠径部に小児頭大の膨隆を認めた.鼠径ヘルニアの嵌頓と診断し,緊急手術を施行した.腹腔鏡下に観察を行うと,腹腔内に壊死腸管を認めたため,開腹手術に移行した.ヘルニア内に嵌頓していた回盲部および回腸には壊疽性変化は認めなかった.壊死腸管を切除し,ヘルニアは従来法で修復した.本症例のようなヘルニアの場合,前方アプローチで整復,ヘルニアの修復を行うだけでは,腹腔内の壊死腸管を見落としてしまう可能性がある.膨隆の大きな鼠径ヘルニアの嵌頓ではヘルニア内容の腸管のみならず,腹腔内の腸管が壊死に陥っている可能性を考慮すべきである.

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© 2015 日本臨床外科学会
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