2015 年 76 巻 7 号 p. 1656-1661
症例は38歳,女性.嚥下困難を主訴に近医を受診.食道粘膜下腫瘍を指摘され当科紹介となった.上部消化管内視鏡検査では頸胸部食道に隆起性粘膜下病変を認め,生検の病理組織所見で核異型・分裂像著明な紡錘形細胞が錯綜状に配列し,Ki-67染色は高度陽性であった.食道原発平滑筋肉腫の疑いにて,胸腔鏡手技を併用した喉頭温存食道全摘術を施行し,後縦隔経路で挙上した胃管・有茎遊離空腸・咽頭の再建術を施行した.切除標本の免疫組織染色では,desmin・α-SMAが陽性,c-kit・CD34・S-100蛋白・keratinは陰性であり,平滑筋肉腫と診断した.術後の嚥下機能は良好であった.術後半年以上経過するも再発徴候は認めていない.頸胸部食道平滑筋肉腫に対して,胸腔鏡下手術を併用し根治性を担保でき,さらに頭頸部外科・形成外科との合同手術で喉頭機能を温存することができた症例を経験したので報告する.