日本臨床外科学会雑誌
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症例
プレドニゾロン投与が奏効したS状結腸穿孔によるバリウム腹膜炎の1例
上村 志臣真木 健裕金古 裕之三栖 賢次郎猪俣 斉近江 亮
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2015 年 76 巻 7 号 p. 1733-1738

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抄録

症例は63歳,女性.検診で上部消化管のバリウム造影検査を施行された翌日より嘔吐が出現し,検査後2日目に当院を受診.CTで腹腔内へのバリウムの漏出を認め,S状結腸穿孔が疑われた.血液検査では炎症反応の異常高値,腎機能の異常を認めた.S状結腸穿孔の診断で緊急手術を行った.開腹するとS状結腸穿孔を認め,Hartmann手術を施行した.術後早期経過は良好であったが,16PODより高熱が出現し,血液検査で強い炎症を認めた.抗菌薬投与を行ったが炎症は遷延した.CTで腹腔内にバリウムの残存を認め,残存バリウムによる炎症と判断しステロイドを投与したところ,速やかに軽快した.術後5カ月で人工肛門閉鎖を行い,現在異常を認めていない.バリウム腹膜炎は極めて稀であり,非常に重篤な疾患である.今回われわれは,術後炎症反応が遷延したS状結腸穿孔によるバリウム腹膜炎に対し,ステロイド治療により良好な結果を得たので報告する.

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