抄録
今回われわれは,腹腔鏡下低位前方切除の術中に広範な皮下気腫と換気障害をきたした症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.症例は80歳台の女性.血便を主訴に近医を受診し直腸癌の診断を受けた.手術開始から約3時間後に高炭酸ガス血症を伴う換気障害と前胸部の皮下気腫が出現した.術中胸部X線検査では気胸はなく広範囲皮下気腫を認めた.気腹状態を解除することで換気障害は軽快したため,気腹圧を10mmHgから8mmHgに下げて手術を再開した.その後は換気障害を認めることはなく手術は終了した.術後経過良好で術後13日目に退院.皮下気腫はすべての腹腔鏡下手術の約20-60%に発生するとされるが,換気障害を伴う広範囲皮下気腫を発症することはまれである.本症例は高齢で痩せ形の女性であり,組織の脆弱性に起因すると考えられる.麻酔科医師と連携し重症化しないよう早期発見し対処を行うことが肝要である.