2015 年 76 巻 8 号 p. 2061-2064
症例は46歳,女性.腹痛と嘔吐を主訴に来院し,腸閉塞の診断で入院した.開腹手術歴はなかった.腹部CTでは,骨盤底部で拡張小腸が,拡張のない腸管径に移行する部分を認めた.イレウス管による保存的治療で改善せず,第6病日の小腸造影で骨盤内に小腸の完全閉塞を認めた.骨盤内の器質的病変が原因と診断し,第7病日に手術を施行した.開腹するとDouglas窩に腹膜欠損部があり,回腸が嵌頓していた.整復するも,嵌頓部を中心に腸管の血流障害が広がっていたため,腸切除を行い,腹膜欠損部を縫合閉鎖した.術後経過は良好であった.原因不詳の腸閉塞では,保存的治療が可能な病態であっても,内ヘルニアを念頭に置いて速やかに対処する必要があると考えられた.