2015 年 76 巻 9 号 p. 2116-2119
症例は63歳の女性.左腋窩の腫瘤と疼痛を主訴に受診した.左腋窩に約8cm大のリンパ節腫大,左乳頭のびらんを認めたが,乳房に腫瘤は認めなかった.マンモグラフィでは多形,区域性の石灰化を認めた.同部の針生検では非浸潤性乳管癌(以下,DCIS),乳頭部の擦過細胞診でも悪性だった.しかし,腋窩リンパ節の生検結果は未分化癌であり,別個の病変と考えられた.全身精査で原発病変を認めず,DCISに腋窩原発不明癌が合併したものと診断した.化学療法を施行し,腋窩リンパ節の縮小が得られ,左乳房切除・腋窩リンパ節郭清術を施行した.術後に腋窩・鎖骨上下に放射線治療を行い経過観察しているが,術後2年6カ月現在,再発を認めていない.本症例のように腋窩腫瘤が主病変の場合,潜在性乳癌・悪性リンパ腫・乳房以外の悪性腫瘍の転移などが鑑別にあげられるが,治療方針決定のため,リンパ節の組織学的診断は必須と考えられた.