目的:手術を施行した高齢大腸癌患者の身体的・社会的リスク因子と治療の現状を示す.方法:患者背景,入院経過,退院経路を含む生活環境,薬物療法と予後について,非高齢群(74歳以下276例)と高齢群(75歳以上108例)で比較検討した.結果:高齢群の70%強が基礎疾患を有し,低栄養・認知症等ハイリスク症例が多かったが,進行度・根治性・手術侵襲は非高齢群と差はなかった.高齢群の28.7%が通常自宅退院が困難であり,若い世代の支えがない患者の薬物療法施行率や予後は不良であった.高齢群全体の5生率は52.2%と不良であったが,CurC例を除く疾患特異的5生率は88.4%と良好であった.結語:高齢患者はハイリスク症例が多いが根治手術症例の予後は良好であり,個々のリスクに注意しつつも根治性を追求することが重要と考えられた.低い薬物療法施行率と社会的支えがないことが予後低下の一因であると考えられた.