抄録
症例は71歳の女性で,S状結腸癌に対して腹腔鏡下S状結腸切除術を施行した.術後21日目よりTreitz靱帯近傍空腸に腸閉塞を発症し,保存的治療で改善しないため,術後39日目に再手術となった.腹腔鏡にて腹腔内を観察すると,Treitz靱帯近傍の空腸が結腸間膜・後腹膜間に陥入・癒着し,狭窄を認めた.陥入腸管に虚血所見はなく,癒着剥離後,空腸漿膜と結腸間膜の腹膜とを縫合固定して手術を終了した.その後の経過は良好で,術後12日目(初回手術後51日目)に軽快退院した.本症例のように,癒着の少ないとされる腹腔鏡手術後でも,腸間膜欠損部に小腸が陥入し,腸閉塞を発症した報告が散見されるようになった.今後,大腸癌に対する腹腔鏡手術はますます普及していくと考えられ,本症例のような腹腔鏡下左側結腸切除術後の内ヘルニアに対して腹腔鏡による修復術を試みることは,治療の低侵襲性という意味でも有用であると考える.