日本臨床外科学会雑誌
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症例
上行結腸憩室炎から波及したと考えられた大腿ヘルニア膿瘍の1例
神谷 真梨子白井 順也鈴木 喜裕羽鳥 慎祐米山 克也益田 宗孝
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2016 年 77 巻 5 号 p. 1255-1260

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抄録

症例は68歳,男性.右下腹部痛,発熱を主訴に来院し,上行結腸憩室炎の診断で経過観察とされた.2日後に右鼠径部の膨隆が出現,発赤を伴う手拳大の有痛性腫瘤を触知した.炎症反応の上昇と,造影CT検査で右鼠径部に腸管脱出を疑う所見を認め,右鼠径ヘルニア嵌頓の診断で緊急手術を施行した.腹腔鏡で観察し,右大腿部に5mmのヘルニア門を認めたが,腹腔内臓器の脱出は認めず,黄色混濁した液体が少量流出した.鼠径法に切り替えると,大腿ヘルニアで,腫瘤は肥厚したヘルニア嚢であったので,高位結紮の上,嚢を切除,大腿輪にメッシュプラグを挿入した.病理学的検査では,腹膜の炎症性肥厚と好中球浸潤を認め,大腿ヘルニア膿瘍と診断.術後28病日にメッシュ感染をきたし,切開排膿とメッシュ除去手術を行った.上行結腸憩室炎から波及したと考えられた,大腿ヘルニア膿瘍という稀な1例を経験した.

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© 2016 日本臨床外科学会
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